「歯を抜いたままにしておくと・・」|熊本市南区の歯医者

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「歯を抜いたままにしておくと・・」

2016年11月01日

 

現代の歯科医師のほとんどの方は、なるべく歯を抜かずに保存するような治療を心がけていると思います。それでも、残念ながら抜歯せざるを得ない場合もあります。

大人の歯は、親知らずを除けば上下左右で28本ありますので、1本くらい抜いたとしても人間には適応力がありますので、抜いた当初は違和感を感じるものの、そのうちに慣れてしまい、さほど不自由を感じなくなります。ところが、そこから口腔内の崩壊が徐々に進んでいく事を頭に入れておいて下さい。

我々の歯は、実は毎日微妙に動いている事を御存じでしょうか?もちろんその量はミリ単位ではなくミクロン単位の世界ですので、一気に目に見える程は動きません。また、少し動いても物を噛んでいる間に元の位置にリセットされます。中には朝から少し咬み合わせが違うと感じる方もいらっしゃいます。それは、寝ている間は上下の歯が当たりませんので、その数時間の間に歯が微妙に動いているからです。歯は(正確には歯を支えている歯根膜は)髪の毛1本でもその厚みを感じる程の鋭いセンサーを持っていますので、ほんの少し動いただけでもそれを感じます。特に、歯周病が進んで歯を支えている骨が減っていたり、炎症がある歯は動く量が大きくなります。

歯は、口唇や頬粘膜と舌の押す力が均衡し、両隣の歯としっかり接触して、反対の歯と咬む事によってその位置を維持しています。歯を抜いてしまうとこの働きが無くなってしまいます。すると、抜いた歯の両隣の歯は抜けているスペースに向かって倒れてきます。また、咬み合わせの無くなった反対側の歯はどこかに当たろうとして伸びてきます。すると、当然ながら歯並びが変って来ます。歯は、垂直にかかる力には強い構造をしていますが、揺さぶられる力には弱く、例えば我々が歯を抜くときは、鉗子でゆっくり揺さぶっていくとだんだん緩んできて、最後は抜けます。歯が倒れてくると、咬むたびに歯に斜めの力がかかるようになり、これは歯を揺さぶる力になりますので悪影響を与えます。

さらに、横の歯との接触が緩んでくる事により、歯のすき間に物が詰まりやすくなり、そこから虫歯や歯周病が発生してしまいます。これも歯を喪失する原因となります。

歯が動いて歯並びが変ると咬み合わせがずれてきますので、それが頭痛や肩こりなどの全身の不調につながる事もあります。

また、抜けた歯が負担していた力を、他の歯が負担することになりますので、場合によっては負担過重になってしまい、残存歯を傷める事にもつながってしまいます。

「蟻の一穴」と言う言葉がありますが、まさに1本の歯を失う所から口腔内の崩壊が始まる事がありますので、やむを得ず歯を抜いた場合には、何らかの方法で早めにその欠損部を補完する事をお勧めいたします。

 

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