入れ歯とは・・・
2016年08月27日
入れ歯の事を、専門的には「義歯」と呼びます。この「義」という言葉を辞書でひも解くと、「実物の代わり、仮の」といった意味があるようです。
他に「義」が付くものを探してみますと、「義手」「義足」「義眼」などが頭に浮かびます。これらの物を見てみますと、残念ながら失った機能を100%回復できるものではありません。
義手で野球はできませんし、義足で全力疾走も難しいでしょう。義眼で視力を回復することも現段階では不可能です。
また、これらを装着してからすぐに使いこなせるかというと、決してそうではありません。リハビリも含めた長期間の訓練が必要になります。その結果、日常生活に何とか差し障りのないくらいの機能回復ができます。
義足などは、切断面に体重がかかってきますので、何度も皮がむけたり出血したりを繰り返すことによって、そこの皮膚が強くなり、体重をささえられるようになると聞きます。
義歯も同じです。患者さんとお話ししていると、義歯に対する期待値が非常に高い事を感じることがよくあります。
例えば、「入れ歯にすると、すぐに噛めるようになる」「残存歯が少なくなって来たら、全部抜いて入れ歯を作った方が良く噛める」といった話です。
義歯は、咬む力を歯が無くなった部位の柔らかい歯茎で受け止めます。咬む力は自分の体重くらいかかると言いますので、かなりの力がかかってきます。初めて義歯を入れた時は、義足と同じで歯茎の方が噛む力を受け止める準備ができていません。そのため、力を受けきれない部分に痛みが出てきます。また、歯が無くなったために、咬む場所も不安定になり、それによって義歯が動き、歯茎をこすって痛みにつながる事もあります。
また、大きく作る方が噛む力を受ける面積が大きくなりますので安定感が増すのですが、その分、異物感も増しますので、この相反する要素をどのくらいの大きさで妥協させるかも難しい所です。患者さんの許容量にも大きく左右されます。
そのため、義歯装着後の微調整はどうしても必要になってきます。「なかなか合わない」という苦情をよく聞きますので胸が痛む所ですが、義歯と言いうものがどういうものなのかを再認識していただき、使ってもらいながら体になじむように調整していただければと思います。また、歯茎の状態も変化しますので、定期的に歯科医院で適合状態をチェックされることをお勧めいたします。それによって、長く使い続ける事も可能になります。
野生動物は歯を失うとエサが獲れなくなり、それが死に直結します。人間は生物の中で唯一、食べ物を加工することと、義歯を入れることによって歯を失っても命を繋ぐことができます。食は命が続く限り続くものであり、楽しみでもあります。義歯と上手に付き合いながら、充実した日常生活を送られることを歯科関係者は望んでおります。