新型コロナウィルスを寄せ付けない歯磨き術
2020年06月10日
「朝イチ」か「朝食後」か? 新型コロナウイルスを寄せ付けない“歯磨き術”
「唾液力」で免疫機能を高めよう!
「ウイルスは、口や鼻などの粘膜を通して体内に入って来ます。そこで注目して欲しいのが、『唾液の力』です。唾液の99%は水分ですが、残り1%に含まれている100種類以上の成分の中に、抗ウイルス・抗菌の作用をもつ免疫物質があります。
唾液はいわば、口の中を洗い流す天然の洗剤なのです。新型コロナウイルスに対しても、『唾液力』が低下すれば感染しやすくなり、高めておけば感染しにくくなると考えられます」こう語るのは、神奈川歯科大学副学長で歯学博士の槻木恵一氏だ。20年にわたって唾液の効能を研究してきた槻木氏は、「唾液腺健康医学」という新しい学問領域を提唱している。
槻木恵一氏(神奈川歯科大学副学長)
細菌やウイルスは“歯周ポケット”から侵入しやすい
「唾液に含まれる抗菌物質のうち、最も強力で分泌量も多いのが、IgA(免疫グロブリンA)です。口の中にウイルスや細菌などの異物が侵入すると、IgAが素早く見つけて取り囲み、粘膜への付着を防ぎます。するとウイルスや細菌は中和され、あるいは活性を失い、感染することなく消化されてしまいます」
口や鼻や肺の表面を守っているIgAには、悪いウイルスや細菌だけ識別して排除する優れた性質があるという。身体にとって未知の存在である新型コロナウイルスに対しても、撃退効果が期待できるわけだ。
「そんなIgAの働きを阻害して免疫を下げてしまう要因として、激しい運動やストレスのほか、歯周病によってできる歯周ポケットがあります。歯周病菌は口の中の常在菌ですから、抗菌作用が働いていれば増えません。しかし、歯周病が進んで歯と歯茎の溝に歯周ポケットができると、IgAはその中まで届きません。細菌やウイルスは、そこから侵入しやすくなるのです」
大切なのは「歯磨き」と「舌磨き」
新型コロナウイルスが口の中の細菌と一緒になって肺に入り込むと、重症化することがわかっている。口の中をきれいにして唾液力を高めることは、感染予防にも、重症化の予防においても不可欠なのだ。
まず大切なのは、歯磨きと舌磨き。
「歯磨きで最も重要なのは、朝一番にやること。朝の口内は細菌まみれです。寝ている間は唾液がほとんど出ないので、自浄作用が働きません。寝る前に歯磨きをしても、朝起きたときには30倍ぐらい細菌が増えてしまいます。そんな状態で朝食を摂れば、細菌を全部飲み込むことになってしまいます」
歯磨きは「朝イチ」に
歯は人によって生え方や並び方が違うため、汚れやすい部分と磨きにくい部分が異なる。自分に合った磨き方は、歯医者で教えてもらうことだ。柔らかめの歯ブラシと、フッ素入りの歯磨き粉がお勧め。
舌の奥に溜まる舌苔は細菌と食物残渣の固まりで、のどに近いから付着しやすい。舌クリーナーを使って、粘膜を傷つけないように磨く。
“唾液力”を高めるには?
また、唾液力は毎日の食事や習慣で高めることができる。
「唾液を作る唾液腺という臓器は、細胞を傷つける活性酸素に弱いので、抗酸化作用をもつ成分を含む食べ物を意識して摂るべきです。たとえば、唾液の分泌を促進するケルセチンを含むタマネギや長ネギ。ウイルスの増殖を防ぐフコイダンの多い、もずくやめかぶ。ビタミンEの100倍の抗酸化作用をもつとされるリコピンを含むトマト、などがあります。
唾液の質を高めるためにお勧めなのは、乳製品、発酵食品、食物繊維です」
食材を大きめに切ったり、ひと口のご飯の量を半分に減らすだけでも、咀嚼する回数が増え、唾液の分泌量を増やすことに繋がるという。