あなたの歯のケアは 間違っている! 6つの誤解とその正解
2016年06月27日
歯周病学会が発表した記事を転載します。
歯周病は、中年以降の日本人では80%がかかっている病気だ。初期は目立った症状がなく、ゆっくり進行するため、「静かな病気(サイレント・ディジーズ)」とも呼ばれ、日本人が歯を失う最も大きな原因となっている。 しかし安心してほしい。歯周病は正しい知識さえあれば防ぐことができる病気なのだ。それなのに、世の中には歯周病の専門家から見て、首をかしげたくなるような不正確な情報が蔓延(まんえん)しているという。 そこで、歯周病の原因・治療・予防についての研究や歯科医師の教育を行っている日本歯周病学会と、日本臨床歯周病学会が全面的に協力し、歯周病に関する“正しい”知識の普及を目的とした初の書籍、『日本人はこうして歯を失っていく 専門医が教える歯周病の怖さと正しい治し方』(朝日新聞出版)を発売。本書から特別に、歯のケアに対する6つの誤解と正解を紹介する
【誤解その1】高機能な電動歯ブラシを使っているからケアは完璧だ
<正解 使い方を間違えれば無用の長物に>
近年は、電動歯ブラシを使用してブラッシングをする人が増えています。 各メーカーの電動歯ブラシに搭載されている、汚れをかき出し歯周病の原因となる汚れを落とす技術は、歯科医師も目を見張るほど。しかし、電動歯ブラシを使用している患者さんの口の中を診てみると、きちんと磨けていないことがとても多いのです。 電動歯ブラシが代わりにやってくれるのは、ブラシを小刻みに動かす作業だけ。磨きたい位置まで歯ブラシを移動させる作業は、患者さん本人がやらなければなりません。磨きたい部分にしっかりブラシを当てることができなければ、電動歯ブラシはせっかくの機能を発揮することができないのです。
【誤解その2】歯磨き剤や洗口液で歯周病が治せる
<正解 予防効果は期待できても、治せる歯磨き剤はない>
ドラッグストアの店頭には、歯周病予防を謳う歯磨き剤や洗口液が並んでいます。こうした商品の広告には、歯肉からの出血や歯肉の腫れ、口臭といった言葉が頻繁に登場し、歯周病に効果があるように思う人も多いでしょう。実際、こうした症状を歯磨き剤や洗口液でなんとか抑えよう、あるいは治そうとしている人はたくさんいます。 パッケージに「歯周病予防」と明記している歯磨き剤や洗口液の場合、予防効果はある程度期待できます。しかし「歯周病を治す」とはどこにも書いていないはずです。歯周病を完全に防いだり治したりできる夢のような歯磨き剤や洗口液はありません。歯科医院を受診してください。
【誤解その3】機能性ガムを噛んでいれば歯周病にならない
<正解 ガムだけでは不十分>
かつてのガムは、糖分が多いために“むし歯のもと”とされてきました。ところが今は一転して「歯を丈夫にする」「むし歯予防」などを謳った機能性商品が登場し、“歯のミカタ”に変わってきています。その効果も、歯の再石灰化の促進、むし歯菌にむし歯の原因となる酸をつくらせない、歯を溶かす原因になる酸から歯を守るなどさまざま。さらに、「噛む」ことによって、細菌の増殖を抑える唾液を増やし、噛む力が衰えないようにする効用もあるのです。 でもガムを噛むだけでは、むし歯や歯周病は防ぐことができません。とくに歯周病の場合は、歯ぐきの根元のプラーク(歯垢)を歯ブラシで機械的に落とす必要があるのです。
【誤解その4】歯周病には歯肉のマッサージが効く!
<正解 歯周病の治療には効果なし>
高齢者の中には、「歯槽膿漏(歯周病)が良くなる」と信じて、せっせと指で歯肉のマッサージをしている人がいます。これはおそらく、マッサージすることで、歯周病が悪化して腫れた歯肉の膿やたまった血が排出され、歯肉が引き締まって良くなる、という考えによるもののようです。しかし、「歯肉をマッサージして歯周病が治った」ということを証明した研究や論文は一つもありません。 歯肉のマッサージ自体は悪いことではありませんが、わざわざ指でマッサージするよりも、歯ブラシで歯と歯肉の境い目のプラークを除去しながら歯肉をマッサージするほうが炎症が軽減するため、歯周病の予防や改善には効果的といえるでしょう。
【誤解その5】歯周病で歯が抜けてもインプラントがあるから大丈夫
<正解 歯周病を改善できない人はインプラントは無駄になる>
歯周病で歯が全部抜けてしまうと、一昔前までは総入れ歯にするしかありませんでした。近年は人工歯根を埋め込んで再建する「インプラント治療」が普及しました。見た目も使い心地も自分の歯に近く、歯を失った人にとって救いとなる方法ですが、「インプラントがあるから歯が抜けても大丈夫」と、悪い意味での安心感を持つ人が増えています。 しかし、歯周病のために骨が破壊され、人工歯根を埋め込むことができない場合もあります。また、埋め込めたとしても清掃が不十分だと「インプラント周囲炎」といわれる感染が生じ、抜かなければならないことも。ブラッシングがきちんとできないままでは、インプラント治療はできません。
【誤解その6】歯はなにがなんでも残すべきだ
<正解 抜歯したほうがいいこともある>
歯周病が進行してしまった歯を残しておくと、その歯を支えている歯槽骨だけでなく、隣の歯や周辺の骨にまで悪影響を及ぼします。骨がかなり溶けて、すでに噛む機能を果たしていない歯を残していても何の役にも立ちません。無理に残しても、結局抜かざるを得なくなるケースがほとんどで、かえって抜いた後の状態が悪くなって入れ歯を入れるのが難しくなったり、腫れや痛みが生じたりするなど不快な症状を繰り返す原因にもなります。 歯を残したいという患者さんの気持ちも理解できます。ただ、歯科医師も必要があるから抜歯をするのです。主治医の説明に納得できないときは、他の歯科医師を受診して意見を聞くのもいいでしょう。